農地の相続は事前によく検討する必要があります。
なぜなら、田や畑などの農地には規制により、相続した後に「別の人に譲りたい」と思っても簡単に譲ることができなくなっているからです。
ここでは農地の相続について、「農地として使う場合」「農地を使う予定がない場合」について解説します。
農地を相続して使う場合
相続により農地を取得したら、まず相続登記を行って、その後、農業委員会への届出をする必要があります。
農地の相続登記
相続した農地を管轄する法務局で登記申請書と必要書類を揃えて申請します。
必要書類は以下のとおりです。
- 登記申請書
- 被相続人の戸籍の附票
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 相続人全員の戸籍
- 相続人全員の印鑑証明書
- 農地を相続する人の住民票
- 農地の固定資産税評価証明書
- 遺産分割協議書
※遺産分割により農地を取得する場合の必要書類です
また、登記申請においては登録免許税の納付も必要になります。(固定資産税評価額の0.4%に相当する額)登録免許税がかからない場合もあります。
農業委員会へ届出
相続登記が完了したら各自治体の農業委員会に届出をしましょう。
必要書類は以下のとおりです。
- 届出書
- 相続登記後の登記事項証明書
これで、農地を相続する場合の手続きは完了です。自分でやることも比較的簡単ですが、戸籍の集め方が分からない場合や見方が分からないような場合は専門家に依頼することをお勧めします。
農地を使う予定がない
現代では、農業をやりたい人が少なくなっており、実家の農地を引き継ぎたくないという方も多いです。
農地は一度相続してしまうと簡単に手放せない場合があります。
ですので、基礎知識として以下のような選択肢があるということを覚えておくとよいと思います。
1.農地をそのまま売却
農地を相続して他の農家に売却する方法です。
一定の要件を満たしている農家であれば農地をそのまま売却することができます。 しかし、勝手に売却することはできず、農業委員会での手続きが必要になります。
2.農地以外の用途に転用
農地を農地以外のことに使う方法です。
具体例としては以下のような場合があります。
- 住宅を建てて地目を宅地への変更をして売却や賃貸
- 土地造成をして貸駐車場として使うことで地目を雑種地に変更し売却や賃貸
- 土地造成をして資材置場として使うことで地目を雑種地に変更し売却や賃貸
しかし、これも農業委員会の手続きが必要です。また、そもそもそのような開発をすることができない地域もありますので、事前に農地を別のことに利用できるか調査して判断するようにしましょう。
なお、農地以外の用途にした場合には土地地目変更登記が必要になります。
3.相続放棄
買ってくれそうな農家もいないし、農地以外に使うこともできないとなれば、相続放棄を検討することになるでしょう。
相続放棄をすれば農地の相続から逃れることができますが、全ての財産を放棄してしまうため、現金・預貯金などの財産も受け取ることができなくなってしまいます。
どうしても実家を残しておきたい場合は相続放棄はするべきではありません。 また、相続放棄は3か月以内に行う必要があるため、相続開始後早急に判断しなければなりません。
4.国に引き継いでもらう
相続等が原因で相続人が不動産を引き継いだ場合には、ある一定の要件を満たすことで国に引き継いでもらうことができる制度があります。(令和5年4月27日スタート)
この制度を使うことで、必要な財産だけ受け取って、不要な財産を手放すことができる可能性があります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
5.放置
これら1~4の方法が全て難しいのであれば、お隣の土地に迷惑がかからない程度の管理を続けることになります。
この管理を怠ると、最悪の場合、近隣住民から訴えられるようなことがあるかもしれません。
私は土地境界の専門家として様々なトラブルを目にしておりますが、管理不足からのトラブルは非常に多いです。
また、放置するからといって相続登記をしない方が稀にいらっしゃいます。
相続登記は令和6年から義務化になりますし罰則もあります。
バレなかったとしても相続登記をしないと次の世代に大変な迷惑がかかることになりますので、放置するとしても相続登記は必ず行いましょう。
まとめ
冒頭でも述べましたが、農地の相続については事前に十分な検討をする必要があります。
ご自身での手続きに自信がないようであれば専門家に相談してみてください。相続登記は司法書士、売却に伴う地目変更は土地家屋調査士、農業委員会の手続きは行政書士が専門です。当事務所では、様々な士業と提携しておりますので、面倒な手続きをワンストップで完了させることができます。
また、不動産事業者と提携しているため不動産の売却(農地以外の用途)のお手伝いができる場合もございます。そのようなご相談でも結構ですのでお気軽にご相談くださいませ。