豆知識不動産

【筆界特定制度とは?】隣人と境界で揉めたらどうするべき?

「筆界」とは、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線であり、所有者同士の合意などによって変更することはできません。

これに対し、一般的にいう「境界」は、筆界と同じ意味で用いられるほか、所有権の範囲を画する線という意味で用いられることがあり、その場合には、筆界とは異なる概念となります。

この所有権に基づく境界のことを「所有権界」と言います。筆界は所有権の範囲と一致することが多いですが、一致しないこともあります。

どのようなときに利用する制度なのか?

土地の売却や分筆の際に、お隣の方との境界(筆界)を確定する必要があります。

この際に、双方の主張が相違し、お互い納得できる筆界を決めることができないときなどに利用します。その他、お隣の方が立会を拒否される場合や、どこに住んでいるか判らない場合などでも利用することができます。

注意点ですが、最初から「筆界特定制度」を利用することはありません。普通は「境界確定測量」を行い、境界を決めることができます。

境界確定測量については下記のページを参考にしてください。

境界確定測量

筆界特定制度を利用するのは、境界確定測量が上手く完了できない案件などの特殊な場合がほとんどです。

筆界特定の流れ

法務局または地方法務局の長から任命され、事件ごとに指定された「筆界調査委員」が、筆界特定のために必要な事実の調査を行い、その意見を踏まえて「筆界特定登記官」が筆界を特定します。

  1. 申請
    土地の所有権登記名義人等が申請します。(土地家屋調査士に依頼すれば資格者代理人として土地家屋調査士が申請します。)
    ※筆界特定の対象とならないものなどは、却下されます。また、手数料を納付しないときも却下されます。
  2. 関係者への通知
    筆界特定の申請がされた旨が公告されるとともに、関係人(筆界で接する隣地所有者)に対して通知されます。その際、申請人・関係人は意見・資料の提出をすることができ、その場合には、提出された旨が申請人・関係人(相手方等)に通知されます。
  3. 資料収集・実地調査
    法務局または地方法務局や関係機関から、資料が収集されます。また、対象土地の状況等が調査されます。
  4. 測量費用概算額の予納
    測量費用の概算額を申請人が予納します。(測量費用の概算額の予納がないときは、申請が却下されます。)
  5. 対象土地の測量
    調査の結果を踏まえ、対象土地の測量をします。
  6. 意見聴取
    筆界特定登記官に、申請人・関係人が意見を述べたり、資料を提出する機会が与えられます。期日には、筆界調査委員が立ち会います。
  7. 筆界特定
    筆界調査委員の意見を踏まえ、地図等の内容や様々な状況・事情を総合的に考慮して、筆界特定登記官が対象土地の筆界を特定します。
  8. 通知・公告
    申請人に筆界特定書の内容が通知され、筆界特定をした旨が公告され、関係人に通知されます。

筆界特定に要する期間

福岡法務局の場合6か月はかかる傾向にあります。案件の内容にもよりますが、それ以上かかることもあるようです。

費用

  • 申請手数料
    固定資産課税台帳に登録された土地の価格に基づいて算出します。詳しくはこちら
  • 手続き費用
    上記4にある、測量等の行為に要する費用は申請人が負担しなければなりません。全国一律に決まっているものではないため、申請の段階では手続き費用の概算額を明らかにするのは非常に困難です。
  • 代理人の報酬
    自分自身で申請書類をすべて作成できるようでしたら必要ありません。土地家屋調査士などの代理業務を行うことができる資格者に手続きを依頼する場合はその報酬が必要となります。この業務には、調査・測量が含まれており、50万円以上かかることが多いです。広範囲での測量となる場合は100万円以上となることもあります。

注意事項

  1. 筆界特定は、新たに筆界を定めるものではなく、あくまでも、登記された際の土地の筆界の現地における位置又は範囲を特定するものです。
  2. 筆界特定は、土地の所有権界がどこにあるのかを特定することを目的とするものではありません。
  3. 特定された筆界に不服があるときは、筆界(境界)確定訴訟を提起することができます(筆界特定に不服申立てや取消を求める抗告訴訟を提起することはできません。)。