豆知識

親の介護と相続トラブル

私たちの生活において、家族の一員が認知症になった時のショックは大きいものです。

その中で、予期せぬ問題が生じることがあります。

それが、認知症だった方が亡くなったときの相続トラブルです。

他の相続人から認知症の親からお金を横領したと疑われる可能性や、そのようなトラブルを避けるための対策について見てみましょう。

認知症になったら相続対策はできない?

家族が認知症になったら、相続対策はできないのでしょうか。

実際、認知症になった人が遺言を作成した場合、その遺言が無効になる可能性があります。

その理由は、認知症によって意思表示能力がないと扱われ、その人が遺言を作成した際の意思が明確であったかどうかが問題となるからです。

つまり、認知症発症後に行われた相続対策が無駄になる可能性があります。

親のお金を横領?

認知症の親を介護している子供が親の財布からお金を盗るなんて事は考えられないでしょう。

しかし、実際には介護の過程で現金の管理が難しくなり、お金を下ろしたときに、ついつい自分の懐に入れてしまったということが多く発生しています。

これは必ずしも悪意のある横領というものではなく、介護の過程で現金が必要になることは多く、謝って自分の財布に入ってしまったというケースもあります。

しかし、介護を行っていない第三者から見ると、「介護を理由にお金を横領したんじゃないか」と疑われる可能性は十分にあります。

では、どのようにして対策すれば疑われずに済むのでしょうか。

疑われないための対策

このような事態を避けるための対策として、現金や口座の出入りを記録するようにします。

親の財布(金融口座など)からお金を出し入れしたときは、その都度記録するようにすると良いでしょう。

書く内容も、何月何日、現金or振込、使用目的、これらを記す程度である程度自身の行動を明確に説明することができます。

また、レシートも併せて保存しておくことで、より信憑性の高い説明資料となりますので、こういったものも捨てることなく残すようにしましょう。

また、それらの資料を家族が集まったときに公開して、全員で話し合ったりすることも有効な手段と言えます。

ちなみに、銀行口座の取引履歴は過去10年程遡って取得することができますし、亡くなった方の財産調査の際にも取引履歴を取得することもあります。

ですので、帳簿を誤魔化して横領してもバレます。

相続争いに財産額は関係ない

金持ち喧嘩せずという諺がありますが、相続においても実は似たような状況です。

相続争いの調停・審判件数は、2020年は11300件程度起きています。

一説では、資産が5000万円以下で調停・審判になるケースが8割近くになっていると言われています。

資産いくらからをお金持ちと判断するかは人それぞれですが、調停・審判にまでなる案件の8割近くが普通の家庭で起きているという状況です。

つまり、相続トラブルは、遺産の金額ではなく、それまでの経緯や遺産分割協議の公平性などから発生しているのです。

特に、介護や親の世話などで使った現金は記録を付けていないと、遺産分割の際に難癖をつけられるかもしれません。

まとめ

現代において、家族の一員が認知症になるというのは避けられないことかもしれません。

しかし、その中で発生する可能性のある問題、それが相続トラブルであれ、何であれ、それに備えることは可能です。

認知症になってしまうと相続対策が一切できないと言っても過言ではありません。

また、献身的に親の世話をしたのに、兄弟姉妹たちからは「無駄遣いだ」「親のお金を使い込んだ」などの難癖をつけられて、相続トラブルに巻き込まれることがあるかもしれません。

そのようなことにならないためには、しっかりとした対策と、まめに連絡を取り合う人間関係を築いていく必要があります。

親が元気であるうちに一度相続について話し合ってみることも良いかもしれません。

当事務所では、様々な専門家と提携しているため、円満に相続を進めるための提案や相続トラブルに関わる対策等をワンストップで対応しております。

お困りの際はお気軽にご相談くださいませ。