コラム

デジタル時代における新たな課題

私たちはますますデジタル化された世界で生活し、その一部として、私たちの価値ある所有物もデジタル化されています。

これらのデジタル化された所有物は「デジタル遺産」や「デジタル遺品」として、私たちが亡くなった後に残るものとなります。

しかし、これらは通常の遺産や遺品とは違い、相続のプロセスが複雑であり、新たな課題を引き起こします。

今回は、デジタル遺産とデジタル遺品についてお話します。

1. デジタル遺産とは?デジタル遺品とは?

1-1.デジタル遺産とは

デジタル遺産とは、一般的にはオンラインで生成または保存され、金銭的価値を持つものを指します。ネット銀行、暗号通貨やNFTなどです。

例えば、Bitcoinのような暗号通貨はその価値が高まるにつれ、無視できない遺産となっています。

1-2.デジタル遺品とは

デジタル遺品とは、金銭的な価値がないものの、感情的な価値があるデジタルデータを指します。

これには電子メールのやり取り、デジタル写真やビデオ、ソーシャルメディアの投稿などが含まれます。

これらのデジタル遺品は遺族にとって個人的な意義があり、遺産として保存したいと考えることが多いです。

2.相続の問題点

デジタル遺産とデジタル遺品の相続にはいくつかの困難があります。

2-1.情報管理の問題

デジタル遺産や遺品はしばしば本人だけが管理しているため、その情報が分からないとアクセスすることが難しくなります。

パスワードやアカウント詳細、セキュリティ質問の回答などが知られていないと、大切なデータにアクセスすることができない場合があります。

2-2.存在がわかりにくい

デジタル遺産や遺品の存在に気づかないこともあります。

特に暗号通貨のような資産は、その存在を示す物理的な証拠がないため、存在自体が見逃されることがあります。

2-3. 相続手続きが煩雑

デジタル遺産の相続手続き自体も困難であり、一般的な手続きとは大きく異なります。

手続きは大部分がオンラインで行われ、特に高齢者にとっては難易度が高いことが多いです。

3.放置することの危険性

デジタル遺産を放置すると様々な問題が起きる可能性があります。

3-1.遺産分割協議のやり直し

デジタル遺産はその性質上、調査が難しく、その存在が死後数年経って明らかになることもあります。

新たな財産が見つかり、その財産について遺産分割の再協議が必要になることがあります。

3-2.相続税の問題

遺産が後から明らかになった場合、追加の相続税が課される可能性もあります。

また、もともと相続税がかからなかったものの、デジタル遺産の発見により相続税が発生する可能性もあります。

3-3.損をしてしまう可能性

最近は様々なサブスクリプションサービス(音楽や映像のストリーミングサービスやクラウドサービスなど)があり、これらの存在に気づくことなく放置されていると、支払いが継続され、金銭的な損失をもたらす可能性もあります。

4.対策

デジタル遺産管理サービスの利用することである程度の対策ができます。

これらのサービスは、デジタル遺産の一元管理を可能にし、緊急時や死亡時に必要な情報を信頼できる人々と共有できるようにします。

例えば、Googleには「アカウント無効化管理ツール」が提供されていて、ユーザーが一定の期間自分のアカウントを利用していない状態が続いた場合に、そのアカウントデータの一部を公開したり、他のユーザーに通知したりするツールです。

他にも、LastPassというサービスでは、緊急アクセス機能があります。これにより、ユーザーは自分のパスワードを選択した信頼できる人に提供することができます。

サービスを紹介しただけであり、サービス内容を保証したものではございません。これらのサービスを利用する場合は、ご自身で調査したうえでご使用ください。当事務所ではサービスの利用によるトラブルなど一切の責任を負いかねます。

自分でメモ帳にパスワードを残したり、そもそもアカウントを家族で共有できるような状態にしたりすることも対策の一つです。※ただし、プライバシーとセキュリティについて十分に考慮する必要があります。

まとめ

デジタル遺産・遺品の管理と相続は、まだまだ発展途上の分野であり、多くの疑問や複雑さを抱えています。

それらを一人で解決するのは困難な場合もあります。こうした状況では、生前に専門家へ相談することが極めて重要となります。

総じて、デジタル時代には新たな課題がありますが、それらに対応するための方法も存在します。

我々一人一人がデジタル遺産・遺品の管理・相続の重要性を理解し、適切な準備と対策を行うことが求められます。

デジタル遺産と遺品の管理は、今後ますます重要となる領域であり、適切な対応は遺族への大きな負担を軽減することができます。

デジタル遺産管理サービスの利用やデジタル遺言の作成、そして必要に応じて専門家に相談するなど、亡くなった後のデジタル足跡について早めに考えることが、我々のデジタルライフをより豊かで、安心できるものにするための鍵となるでしょう。