コラム

複雑な家族関係での相続:仲間外れはいけません!

相続権は現在婚姻関係にある夫婦の子ども以外にもあることをご存知でしょうか?

離婚していても親子関係は続き、子には相続権が認められます。

つまり、遺産相続に際しては前妻の子にも相続権があるため、前妻の子の居場所を調べて遺産分割協議に参加させなければなりません。

連絡先を知らないからと言って、仲間外れにして勝手に相続手続きを進めると大きなトラブルになります。

そこで今回は、複雑な家族関係での相続の進め方についてお話します。

1.前妻の子にも相続権はある

子のいる夫婦が離婚しても、父と子の間の親子関係が消えることはありません。

そのため、父が再婚し後妻との間に子ができたあとに亡くなったとしても、前妻の子にも相続権があります。

前妻の子であろうが、後妻の子であろうが相続分に違いはありません。

これは、「婚外子」いわゆる愛人の子であっても認知されていれば、実子と同じ相続分となります。

また、前妻の子に一切財産を相続させないような遺言書を作成したとしても、前妻の子は遺留分の請求ができます。

2.前妻の子に相続開始を知らせないと、、、

前述したとおり、前妻の子も相続人となりますので、相続開始後に遺産分割協議に参加してもらわないといけません。

しかし、亡くなった方が何かしらの準備をしていたり、他の相続人から連絡したりしない限り、前妻の子に相続が始まったことを知ることはないと考えられます。

では、もし、連絡せずに相続手続きを開始したらどうなると思いますか?

2-1.遺産分割協議が無効になる

遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりません。

相続人全員が一同に同じ場所に会して協議をする必要はありませんが、電話やメールなどで協議をし、最終的には相続人全員で協議した内容を書面にまとめて署名押印する必要があります。

したがって、前妻の子に連絡をせず、後妻と後妻の子だけで協議を行ったとしても、その分割協議は無効となります。

2-2.登記手続きや金融機関の手続きが進まない

相続登記や金融機関の名義変更や解約の手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を提出する必要があります。

その戸籍を見れば前妻の子が相続人となることは明らかですので、連絡をせずに手続きを進めることは不可能です。

3.前妻の子の探し方

ここまでの話で前妻の子がいる場合には、必ず連絡しなければならないことが分かったと思います。

しかし、その連絡先が分からないということも多いと思います。

そこで、前妻の子の探し方を解説します。

3-1.亡くなった方の戸籍を集める

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を全て集めましょう。

これにより、

「いつ結婚して、その時に子がいたのか」
「連れ子と養子縁組はしたのか」

などが分かります。

3-2.前妻の子の本籍地を調べる

亡くなった方の戸籍を集めていると、離婚後に前妻と前妻の子がどこに転籍したか分かります。

そこから、前妻の子の現在の本籍地を調べることができます。

3-3.前妻の子の住所を調べる

前妻の子の本籍地が分かれば、その本籍地で戸籍の附票を請求することで、現在の住民票がある場所、つまり、現住所が分かります。

その住所宛に相続が開始した旨の手紙を送ることで連絡を取ることができます。

4.前妻の子と一緒に手続きを進める

4-1.遺言書がある場合

遺言書がある場合は、その内容に従って遺産を分割します。

遺留分を侵害していなければスムーズに進むことが多いですが、もし、前妻の子が遺言書の内容に納得しない場合は専門家に相談しましょう。

4-2.遺産分割協議の準備

遺言書がない場合は、遺産分割協議をしなければなりませんので、その旨を伝えましょう。

協議をするためには亡くなった方の財産調査をしなければなりませんので、協議開始まである程度時間がかかることも伝えておくとよいかもしれません。

相手方に相続放棄を求めたり、自分が全て相続するというような発言は、必ずと言っていいほどトラブルになりますので注意しましょう。

4-3.遺産分割協議をする

遺された財産について、それぞれが相続するものを話し合いで決めます。

いままで一度も会ったことがない人と、いきなりお金の話をしなければなりませんので、なかなか話が進まないかもしれません。

ちょっと難しいと感じたり、面倒だと思う場合は、前妻の子が判明したときから専門家に依頼をすることをお勧めします。

まとめ

前妻の子がいる場合に限らず、認知された子、養子縁組した後に離婚して養子縁組を解消していない子など、一度も会ったことがない方と相続手続きを進めるもあります。

やはり、複雑な家族関係で相続が始まると、かなり面倒になることが多いです。

このように状況では、遺された家族が非常に大変になりますので、遺言書で対策するようにしましょう。

そうすれば、少なくとも遺産分割協議をする必要はありませんし、そこから派生するトラブルも防ぐことができます。

当事務所では、相続手続きにおける相続人調査も行っておりますし、遺言書作成のお手伝いもさせていただいております。また、提携している専門家と協力し、様々なトラブルをワンストップで解決することができます。お困りの際はお気軽にご相談くださいませ。