豆知識

相続放棄に関わるトラブル

相続放棄は年々件数が増えており、2016年からの5件間の受理件数は増加傾向にあります。

その理由は様々で、「マイナスの財産が多い」「相続に関わりたくない」など、理由は人それぞれです。

相続放棄をすれば一切相続から手を引くことができて、もう自分には関係ないと思われる方も多いです。

しかし、実は、相続放棄をすれば完了ではなく、相続放棄によってトラブルに巻き込まれることもあるんです。

そこで、今回は相続放棄に関わるトラブルについてまとめてみました。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が自らの相続権を放棄することで、相続財産を受け継がないことを意味します。

相続放棄が認められると、相続人としての権利義務が免除されるため、相続財産の管理や承継に関する責任を負う必要がなくなります。

相続放棄の手続き

相続放棄をする場合、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類を提出しなければなりません。

必要な書類

相続放棄をする場合には、以下の書類が必要となります。

・申述書
・亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票
・相続放棄する人の戸籍謄本
・亡くなった人の死亡の記載のある戸籍謄本
※父母や兄弟姉妹の場合は、追加書類が必要になります。

家庭裁判所に提出したあとに、照会書が届くことがありますので、回答して返送します。

相続放棄の期限

相続放棄には期限があり、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3ヶ月以内に手続きを行う必要があります。

ただし、相続財産の調査に時間がかかる場合などで3ヶ月以内に手続きが難しいようであれば、その期間内に家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることで、期間を延ばしてもらえることがあります。

期間を過ぎたら相続放棄ができなくなりますので、明らかに間に合いそうにない場合は期間の伸長の申立をするようにしましょう。

詳しくは裁判所のページをご覧ください。

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html

よくあるトラブル

相続放棄について以下のようなトラブルに巻き込まれることがあります。

相続放棄を迫られる

被相続人が生前に、「長男に全部残したいから次男のお前は相続放棄をしろ」と言っている場合などもありますし、他の相続人からお前は相続放棄しろと迫られる場合もあります。

相続放棄は被相続人が亡くなった後、つまり、相続が開始されてからしか手続きができませんし、もちろん、相続放棄をするかどうかの判断は個人の自由です。

相続放棄が無効になった

相続人は、相続を承認するか、放棄をするかを選ぶことができます。

相続財産の一部であったとしても、預金を引き出して使ってしまったり、不動産を売却してしまったりすると、相続することを承認したとみなされ相続放棄ができなくなります。

これは、相続放棄の手続き完了後に処分したとしても、相続放棄は無効になってしまいます。

ですので、相続放棄をするか否かに関わらず、相続手続きが完了するまでは、財産に手をつけないようにしましょう。

ただし、葬儀費用などどうしても必要になる金銭があると思います。

葬儀費用などの場合は、財産処分に該当しないと判断されることもありますので、どうしても処分する必要がある場合には注意して行いましょう。

個別具体的に判断する必要がありますが、葬儀費用、亡くなった方の入院費用、形見分けを受け取ることなどは単純処分とならなかった事例があります。

黙って相続放棄をした結果…

実際にこのようなことがありました。

配偶者なし、子2人、両親や祖父母は亡くなっていて、兄弟が5人いらっしゃる方の相続でした。
そして、子が相続放棄をしていて、数年後、何も聞いていない兄弟に数千万円の滞納した税金についての連絡がきたということがありました。

相続財産を受け取る順位は、子が第1順位、親や祖父母などの直系尊属が第2順位、兄弟姉妹が第3順位です。なお、配偶者(夫・妻)は常に相続人です。

先順位の相続人がいる場合、後順位の相続人には相続権はありません。

先順位の相続人全員が相続放棄をすると、後順位の相続人が相続をすることになります。

このように、相続権が移ると借金などの不の財産も得ることになります。

そのため、後順位の相続人に連絡せずに相続放棄をすると、債権者から後順位の相続人に対して突然請求がなされる場合があり、迷惑をかけてしまう可能性があります。

ですので、相続放棄をする場合は、後順位の相続人に対し、事前に相続放棄をする旨などを伝えておく方がよいでしょう。

ちなみに、ご兄弟の場合は、被相続人がなくなってから数年経過していたものの、自身が相続人となったことを知ったのが滞納税金についての連絡が来た時でしたので、相続放棄をすることができました。

まとめ

相続放棄は、相続人の自由判断によって行われるものであり、相続財産を受け継がないことができます。しかし、稀にトラブルが生じることもあります。

相続放棄を行う場合には、事前に専門家に相談することをお勧めします。

当事務所では、様々な専門家と提携しておりますので、相続に関わる相談をワンストップで対応することができます。お困りの際はお気軽にご相談くださいませ。