コラム

あの人には相続させたくない!

長く生きていると、相手が家族であっても「財産を渡したくない」と考える人は少なくないです。

「あいつに残しても無駄になる」

「疎遠だった人には渡したくない」

「全部長女に渡して長男には渡したくない」

など、その理由は様々です。

そこで、今回は「特定の相続人に財産を渡さない方法はあるのか」「極力渡す財産を少なくしたい時にできる対策」などについてまとめました。

相続権は奪えるのか

法定相続人は民法で定められており、全員がそれぞれが相続権を持っています。

しかし、どのような相続人にも平等に財産を渡すということになれば不公平になることがあります。

例えば、自分の介護をしてくれている家族と、何十年も前に家を出て行って音信不通の家族も同じ扱いになってしまうということになり、なにか釈然としませんよね・・・

このような状況になっているものの、相続制度自体には遺された相続人の生活保障という面もあるため、亡くなった方が一方的に相続人の相続権を奪うことは簡単ではありません。

しかし、相続させたくない相続人に渡す財産を少なくすることはできます。

遺言で対策する

遺言書を書くことで特定の相続人に渡るはずの財産を少なくすることができます。

相続人が、配偶者、子や孫などの子孫、親や祖父母などの先祖の場合には、遺留分があるため全てを渡さないということはできません。

しかし、相続人が配偶者と兄弟姉妹という場合で、兄弟姉妹には渡したくないというときには非常に有効です。

生前贈与をする

相続で渡すから相続権があるため、そもそも生前に全て渡しておけば対処できます。

しかし、生前贈与には問題点もあります。

①贈与税が高額である

贈与税の税率は相続税の税率と比較して高額になっています。

もちろん贈与税がかからないようにする方法もありますが、様々な要件を満たしておく必要がありますので、税理士とシミュレーションをした上で実行することが一般的です。

②遺留分を侵害する可能性がある

生前贈与をしたとしても、渡したくない相続人から遺留分侵害の請求をされる可能性があります。

しかし、全ての生前贈与財産がこの対象になるわけではありません。

相続人が婚姻や養子縁組のため、または、生計の資本として受けた贈与は、相続開始前10年間に行われた贈与に限り、遺留分侵害の請求の対象となります。

また、相続人と亡くなった方の双方が、遺留分を侵害することを知っていたのであれば、それより前に行われた贈与も遺留分侵害の請求の対象となります。

このように、生前贈与には複雑な知識が必要になりますので、税理士に相談することをお勧めします。

相続人を廃除

相続人の廃除という方法があります。

これは、特定の相続人から外す行為で、裁判所に申し立てることで可能となることがあります。

単に、「嫌いだから」「疎遠だから」という理由では認められません。

相続人から日常的に暴力を受けていたり、勝手に財産を浪費されていたりなど、特別の事情がある場合に、裁判所に申し立てて、その者を相続人から廃除してもらうことができます。

廃除された者は相続人にはなりませんし、遺留分も主張できませんが、相続する権利は排除された者の子や孫に代襲相続されます。

廃除したい者に子や孫がいる場合は、あまり問題の解決に繋がらないと言えます。

まとめ

ここに挙げた方法以外にも、遺留分の放棄と生前贈与と遺言書の組み合わせによる方法などがありますが、結局のところ、確実に特定の相続人について一切財産を渡さないということは難しいです。

「どうやったら渡す財産を減らせるか」という考えに切り替えて対策することをお勧めします。

そのためには、相続や遺言に関する専門家の知識が必要です。

当事務所では、各専門家と提携しワンストップで対応することができます。 お困りの際はお気軽にご相談くださいませ。